『県民性の日本地図』

 

武光誠 著

文藝春秋 刊

2001年4月20日(初版)
245ページ 720円

評 価
★★

 

著者は、1950年山口県防府市生まれ。東京大学大学院国史学修了。1980年頃から明治学院大学に勤務。2008年東大博士課程修了、「古代太政官制の研究」で文学博士。明治学院大学教養教育センター教授。日本古代史専攻。

本書は、”「おクニはどちらで?」「○○県です」「ホォ、努力家で働きものの多いところですなァ」—そんな会話がいまも交される。全国が均質化される中でも、それぞれの地方の特性、特有の気質は根強く生きているようだ。その特性はいかに形づくられたのか。
縄文・弥生から江戸時代の藩、近代以降に至る長い歴史の中に、地域性の由来をさぐる。”
というもの。

・県民性を生み出したもの
・東の文化と西の文化
・北海道と東北地方(青森・岩手・秋田・山形・宮城・福島)の県民性
・関東地方(群馬・栃木・茨城・埼玉・千葉・神奈川)の県民性
・江戸と東京の気質
・北陸地方(新潟・富山・石川・福井)と山陰地方(鳥取・島根)の県民性
・東海地方(静岡・愛知)と三重県、甲信地方(山梨・長野)と岐阜県の県民性
・京都人の気質
・大阪人の気質
・近畿地方(滋賀・兵庫・奈良・和歌山)の気質
・瀬戸内海沿岸(岡山・広島・山口・徳島・香川・愛媛)の気質
・九州北部・中部(福岡・佐賀・長崎・大分・熊本)の気質
・高知県・九州南部(鹿児島・宮崎)、沖縄の気質
・藩と県民性、そして地方の将来像

県民性(各都道府県ごとの、県民の性質や行動についての、一定の特徴・傾向)については、すでに多くの研究がなされており、特に和辻哲郎氏、祖父江孝男氏などの名著が見られる。
本書は特段目新しいものではなく、一般向けだが、現在の我々の性格・信条が、古代から綿々と連続したもので、特に大名や藩などの影響が大きいことを知る。そして戦国時代の影響も大きいようだ。

したがって、当然、正確な歴史判断が必要なのであるが、本書の歴史認識がすべて正しいのかは分からない。
戦国時代について以下のような記述もあるが、みなさんはどう判断されるであろうか?(47頁)
なお、蛇足であるが、筆者の文章はあまり上手なものではないと感じられた。

「有力な指導者を求める東日本の気質が、東国に上杉謙信、武田信玄などの強大な戦国大名を生んだ。それに対し、合議を重んじる専制的な指導者を嫌う西日本では天下取りの可能性をもつ戦国大名は育たなかった。こう考えると戦国史を理解しやすい。」

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