『関東戦国史(全)』

 

千野原 靖方 著

崙書房出版 刊

2006年3月(1版)
328ページ 3,990円

評 価
★★★

 

著者・千野原靖方(せんのはら やすかた)氏は、1964年栃木県生まれ。本籍地・千葉県市川市。明治大学卒。専門は東国中世史。房総中世史研究所主宰(研究雑誌『中世房総』発行)。
著書に『
東葛の中世城郭』『新編房総戦国史房総里見水軍の研究』『里見家改易始末-房総戦国大名の落日』『国府台合戦を点検する』『戦国房総人名辞典』『常総内海の中世―地域権力と水運の展開』『戦国期江戸湾海上軍事と行徳塩業』など多数。東国戦国史の大家であり、房総中世史研究の権威である。

本書は、「15世紀半ばに鎌倉公方足利成氏の近臣らが関東管領上杉憲忠を謀殺して始まる享徳の大乱から、豊臣秀吉が関東の覇者たる小田原北条氏を滅ぼす天正18年までの約150年間の歴史過程を追い、関東戦国史の全体像を素描する。

第一章 動乱の関東
 享徳の乱勃発とその背景
 山内・扇谷両上杉氏の退勢
 伊勢宗瑞の相模攻略

第二章 戦国大名の争覇戦
 北条氏綱・氏康と両上杉の対決
 上杉輝虎の関東進出
 越相同盟と関東諸士の動向

第三章 北条氏の関東支配と豊臣政権
 北条氏の上野征圧
 豊臣政権と関東
 戦国の終幕

 

東国中世史研究の第一人者が執筆された戦国史。

享徳の乱(1455年・享徳3年、室町時代八代将軍足利義政)から豊臣秀吉による関東征伐(1590年・天正18年)という長い期間にわたっての、関東全域(一部信州を含めた)の戦国史をつづっている。
天下、麻の如く乱れた東国戦国史は、一般になかなか理解するのが難しい(私も同様である)。そのような中で専門的に通史を著わした貴重な一冊と言えよう。歴史書として史料に基づき、また出典を明記しているのは、後学に資する有益な書籍である。

ただ、扱う範囲があまりに広いため、概観的な点が少なくなく、精読しなければ混乱してしまうほど展開が速い面がある。さらには、一級史料から軍記物まで幅広く引用されており、細かい史料の批判までは記されていない事など、一冊にまとめるのに苦心された痕跡が窺われるものでもあった。

 

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