雑兵たちの戦場

-中世の傭兵と奴隷狩り-

 

藤木 久志 著

朝日新聞社 刊

1995年11月1日(1版)
284ページ 2,400円

評 価
★★★★

 

著者の藤木久志氏は、1933年新潟県生まれ。立教大学名誉教授。専門は日本中世史。新潟大学卒業。新潟大学では井上鋭夫に師事。東北大学大学院修了。聖心女子大学助教授、立教大学教授、1986年「豊臣平和令と戦国社会」で文学博士。99年立教大を定年となり2002年まで帝京大学教授(『ウィキペディア(Wikipedia)』)。特に戦国史の研究で有名である。『日本の歴史』は戦国史を知る好著である。

本書は、「飢餓と戦争があいついだ日本の戦国時代、英雄たちの戦場は、人と物の略奪に満ちていた。戦場に繰り広げられる、雑兵たちの奴隷狩り。耕してもまともに食えない人々にとって、戦場は数少ない稼ぎ場だった。口減らしの戦争、略奪に立ち向かう戦場の村の必死の営み。やがて、天下統一によりやがて戦場は閉ざされると、人々はアジアの戦場へ、城郭都市の普請場へ、ゴールド・ラッシュの現場へ殺到した。「雑兵たちの戦場」に立つと、意外な戦国社会像が見えてくる。」というもの。

一級の戦国史家が、戦国時代での雑兵や民衆の生き様を扱った一冊。ほかにもあまり目にすることの無い歴史がつづられており、大変面白い。そして史料に基づいて実証的に記されている。

当時の民衆史、文化感・生活感などが次々とあらわにされるのとともに、特に城郭研究の分野において、「村の城」という概念を論証した重要な書籍である。

文調は読みやすく、興味本意だけでも通読できるし、高度な内容を求める読者にも答えてくれる好著である。学者っぽい気取った文体でないのがいい。

著者曰く、
凶作と飢餓の続く日本中世の死の戦争は、「食うための戦争」という性格を秘めていた。その意味で、戦場は大きな稼ぎ場であり、生命維持の装置でさえあった。だから死の戦場の閉鎖、つまり秀吉の平和は、たしかに人々に安穏をもたらし、華やかな桃山文化を生み出した。だがその底で、稼ぎ場の戦場を閉ざし(中略)、アジア諸国の戦場と国内の新たな都市へ、さらに全国の巨大開発へと、奔流のような人々の流動を起こしつつ、「徳川の平和」「日本の鎖国」へと向かおうとしていた。

 

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城と古戦場

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