徳川将軍家十五代のカルテ

 

篠田 達明 著

新潮新書 刊

2005年5月20日(1版)
188ページ 680円

評 価
★★★

 

著者の篠田 達明氏は、1937(昭和12)年愛知県生まれ。整形外科の医師にして作家。愛知県心身障害者コロニー・こばと学園園長を務めた。医学書に『視覚・聴覚・言語障害児の医療・療育・教育』(共著)、『自閉症スペクトラムの医療・療育・教育』(共著)。

本書は、「健康オタクが過ぎた家康、時代劇とは別人像「気うつ」の家光、内分泌異常で低身長症の綱吉、飲酒が高じて食道がんで逝った光圀、そして実は三人も将軍位に就いた障害者…。芝・増上寺にある徳川家霊廟で発掘された遺体や文献をもとに、歴代将軍を最新医学で診断してみると―。彼らはどんな養生法を心掛けていたのか、そして死因は、さらに世継ぎをもうけるための苦心とは?史実には顕れぬ素顔が見えてくる。 」というもの。

本書は、単純に言って、読んでいて大変面白い一冊であった。

それぞれの将軍の死因が検討されており(家康は胃がん)、またその臨終の様子が書かれている。
また精神的に病んでいた将軍も多く、障害を有した将軍も複数いたらしい。有能な将軍は少ないのであり、ほとんどが傀儡で、幕閣や大奥などが実権を握り、孤独なまま一生を終えたらしい。

こういったことが、読みやすく書かれている。教養書としても有意義な書物である。

著者曰く、
歴代将軍の中に家康ほどの人物は二度とあらわれなかった。ほとんどが凡庸な人物ばかり。運よく将軍の座を射止めても幕閣の助けなしに将軍職をまっとうできた人はまれである。多くの将軍は、上さま、上さまと奉られても、自分は種馬にすぎぬとわかっていた。(中略)将軍職をつめてあげるには、よほど物に動じない精神力と忍耐力が必要ではなかったかと将軍たちに心から同情を禁じ得ない。

 

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城と古戦場

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