『信玄の戦略

 組織、合戦、領国経営

柴辻 俊六 著

中央公論新社 刊

2006年11月25日(1版)
250ページ 760円

評 価
★★★

 

著者・柴辻俊六氏は、1941年山梨県中巨摩郡竜王村生。文学博士。1964年早稲田大学教育学部卒。同大学院文学研究科史学専修修士課程修了。早稲田大学図書館勤務。早稲田大学、法政大学大学院、國學院大學、日本大学において非常勤講師。日本古文書学会運営委員・評議員、山梨郷土研究会理事などを歴任した(『Wikipedia』)
甲斐武田氏の研究で著名で、著書が多数あり、また地方誌『山梨県史』『大月市史』『大田区史』『国分寺市史』『甲府市史』『都留市史』などの編纂もされている。

武田信玄研究の重鎮の一冊。自身で記すように、『武田信玄』以来の信玄通史を著わした書籍で、
武田信玄は、二十一歳の若さで甲斐国守護となった。北条・今川ら強力な諸大名に囲まれながら、信濃・駿河・遠江などを次々と手中に収めると、天下をめざして上洛の途につき、徳川家康を三方ケ原に敗走せしめる。信長をも震撼させた西上作戦を可能としたのは、領国における圧倒的な信玄の権力だった。家督相続後、たゆまず続けられた支配体制の刷新、同盟と交戦を巧みに使い分けての領国拡大-戦国の雄の手腕に迫る。」というもの。

2002年から刊行された史料集『戰國遺文 武田氏編〈全6巻〉』(柴辻 俊六、黒田基樹、丸島和洋 編)の成果を存分に盛り込んだ、現時点では最新の信玄概説書と言えるだろう。

柴辻氏のわりにはあまり固い書き振りではなく読みやすいもので、長年の研究に基づいた、信頼の置ける内容になっている。また合戦の記述は最小限にとどめ、領国整備、経営、家臣団など広範にわたる史実が記されている。【『勝山記』の断簡の発見、信玄画像の再検討】などといったコラムも面白い記事である。

なお、同じく信玄研究の一線に立つ笹本正治氏への反論が2点あり、笹本氏は「棒道」「信玄堤」と武田家との関係を否定しているが、柴辻氏はそれは認められるべきとされている。

ともかく、武田氏に興味のある人であれば、読んで損のない一冊である。

 

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