『直江兼続とお船 』
鈴木 由紀子 著 |
幻冬舎 刊 |
2009年1月30日(1版) |
評 価 |
著者・鈴木由紀子氏は、作家。山形県米沢市生まれ。放送大学教養学部卒。出版社勤務ののち、フリーライター。『婦人画報』『DAME』『SOPHIA』などの女性誌に記事やエッセイを提供。第4回21世紀国際ノンフィクション大賞(1997年)『神の王国――盲目の会津武士山本覚馬』、第4回小学館ノンフィクション大賞優秀賞(1997年)『闇はわれを阻まず――山本覚馬伝』。ノンフィクションから歴史小説まで幅広い執筆活動のほか、放送や講演活動でも歴史ファン層のすそ野を広げている、という。
本書は、NHK大河ドラマに合わせて出版されたもので、「秀吉にその才を見こまれ、家康に売られたけんかを買った上杉家執政・直江兼続。兼続を陰に日なたに支えた妻お船は、幼い我が子を残して主君・景勝の正室・菊姫とともに上洛、上杉家の奥をたばねる要となった。ふたりは関ヶ原合戦後、百二十万石から三十万石に減らされた米沢藩の財政をすくうため、高禄の自家断絶を決意する―。治水、青苧などの殖産、学問所の設立など藩の基礎をつくった兼続と、夫を助けすべてを上杉にささげたお船夫婦の清廉な生涯。 」というもの。 大手古書店で100円で売っていたので購入。定価なら手にも取らないだろう。一見、直江兼続の通史をあらわしたような印象であるが、内容は嫌な予想のとおりであった。 おそらく数冊の歴史書・専門書を基に記述しており、著者が直江氏について深く研究した成果ではない。(作家なのでむべなるかな) 本書は、出典を明記する記事も散見されるので、それで何だか権威性を持たせているが、一番重要な部分は原典もなく、筆者の単なる想像で幕が下ろされている。さらにはなぜか前田慶次郎に関する紙面も多く、かなり俗っぽい一冊になっている。 私は途中で通読する気力も失ったが、あくまでも小説として読むべきもので、本書から何らかの”歴史”を得ようとするのは危険極まりない事であろう。 |