『直江兼続とお船

 

鈴木 由紀子 著

幻冬舎 刊

2009年1月30日(1版)
188ページ 740円

評 価

 

著者・鈴木由紀子氏は、作家。山形県米沢市生まれ。放送大学教養学部卒。出版社勤務ののち、フリーライター。『婦人画報』『DAME』『SOPHIA』などの女性誌に記事やエッセイを提供。第4回21世紀国際ノンフィクション大賞(1997年)『神の王国――盲目の会津武士山本覚馬』、第4回小学館ノンフィクション大賞優秀賞(1997年)『闇はわれを阻まず――山本覚馬伝』。ノンフィクションから歴史小説まで幅広い執筆活動のほか、放送や講演活動でも歴史ファン層のすそ野を広げている、という。

本書は、NHK大河ドラマに合わせて出版されたもので、「秀吉にその才を見こまれ、家康に売られたけんかを買った上杉家執政・直江兼続。兼続を陰に日なたに支えた妻お船は、幼い我が子を残して主君・景勝の正室・菊姫とともに上洛、上杉家の奥をたばねる要となった。ふたりは関ヶ原合戦後、百二十万石から三十万石に減らされた米沢藩の財政をすくうため、高禄の自家断絶を決意する―。治水、青苧などの殖産、学問所の設立など藩の基礎をつくった兼続と、夫を助けすべてを上杉にささげたお船夫婦の清廉な生涯。 」というもの。

大手古書店で100円で売っていたので購入。定価なら手にも取らないだろう。一見、直江兼続の通史をあらわしたような印象であるが、内容は嫌な予想のとおりであった。

おそらく数冊の歴史書・専門書を基に記述しており、著者が直江氏について深く研究した成果ではない。(作家なのでむべなるかな)
そして歴史作家の悪しき点として、いくつかの史伝に、自身のイメージ・理想・偶像を織り交ぜて記述し、それらがすべて事実であったかのような書き振りになっている事が挙げられる。

本書は、出典を明記する記事も散見されるので、それで何だか権威性を持たせているが、一番重要な部分は原典もなく、筆者の単なる想像で幕が下ろされている。さらにはなぜか前田慶次郎に関する紙面も多く、かなり俗っぽい一冊になっている。

私は途中で通読する気力も失ったが、あくまでも小説として読むべきもので、本書から何らかの”歴史”を得ようとするのは危険極まりない事であろう。

 

 戻る

城と古戦場

inserted by FC2 system