『医学の歴史

 

小川 鼎三 著

中央公論新社 刊

1964年4月(1版)
249ページ

評 価
★★★

 

著者・小川 鼎三(おがわ-ていぞう )氏(1901-1984)は、解剖学者、医史学者。明治34年4月14日大分県生まれ。東京帝大卒。東北大助教授を経て東京大学助教授、昭和19年同教授。東大名誉教授、順天堂大教授。順天堂大学医学部医史学研究室を創設。日本医史学会理事長。脳比較解剖学・医学史の大家。特に鯨類の比較解剖学の権威で、「クジラ博士」と呼ばれた。また”雪男”に関心を持ち、1959年にエベレストへの雪男捜索登山隊を結成した。”小細胞性赤核の機能解剖学研究”で学士院賞受賞、昭和59年4月29日順天堂医院で死去、83歳。主著に『脳の解剖学』『鯨の話』『杉田玄白』『東京大学医学部百年史』など。

本書は、毎日出版文化賞を受賞したもので、日本の医学の歩みを東洋と西洋との接点としてとらえながら、異なる人命感によって独自の道を進んだ東西医学の歴史をコンパクトに描く。 」というもの。

すでに50年近く前の著作であるが、現在でも版を重ねている書籍である。詳しくは知らないが、医学史の古典的な入門書・基本書なのであろう。

小川鼎三博士の重厚な知識・学識を基に、古今東西の医学の辿ってきた歴史が、分かりやすく記されたものである。医学は思想・哲学とは不可分の関係にあって、中世において、医学が宗教の影響によって科学的な進歩を遂げることができなかった事実など、とても興味深い内容が盛りだくさんである。

著者曰く、
昔の医者は東西ともずいぶんむだな努力をしたものである。しかし各時代時代で医者の多くは最善をつくして病気を治すつもりであったにちがいない。大きい廻り道をして今の水準にやっと到達した。

 

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