もう一つの桶狭間

 偉大なる従軍記者が語る織田信長の戦略と行動

井上 力 著

講談社出版サービスセンター  刊

平成12年1月20日(1版)
242ページ

評 価

著者・井上 力氏は、1937年大阪生まれ。大阪大学法学部卒。電機メーカー勤務を経て、中小企業診断士・社会労務士。『もう一つの鎌倉時代―藤原定家・太田牛一の系譜』『もう一つの鎌倉物語―平塚雷鳥は間違っていた』『もう一つの大河―太安万侶・太田牛一、大いに語る』など。

本書は、「信長は本当に奇襲で勝ったのか?いまだ仮説でしかない「桶狭間の合戦」の全容―。そのすべてを家臣・太田牛一の遺した『信長公記』が語っていた。誰も読み取れなかった「桶狭間の真実」がここにある。天下布武への第一歩でありながら、今なおその全てがよくわかっていない「桶狭間の合戦」から440年を経て、市井の史眼によって初めて明かされた驚異の全貌。
天下布武への第一歩でありながら、今なおそのすべてがわかっていない桶狭間の合戦。その全容を家臣・太田牛一の遺した「信長公記」が語っていた。誰も読み取れなかった桶狭間の真実がここにある。〈ソフトカバー〉
」というもの。

かなり前に古書店で安価で購入したもの。発行部数はそこそこあったのか現在でも古本屋では散見される。しかし、なぜか読む気がせずに本棚に眠っていた。

基本的には太田牛一『信長公記』を根本史料として、それに『甫庵信長記』『武功夜話』などを交えて桶狭間合戦を再検証しようというもの。
しかし、通説を覆すという目的のために、枝葉末節にこだわっており、結局、何を主張されたいのか分からないし、合戦の全容を把握することはできない。そして、『信長公記』の単語から壮大な想像(妄想?)を繰り広げ、太田牛一の深層心理まで記してしまっている(そんなものは何の根拠もない)。
さらに悪いことに、『甫庵信長記』『武功夜話』は『信長公記』と同列の一級史料であり、それぞれが補完しあうものであるとの論調になっているのだが、『甫庵信長記』は”小瀬甫庵が嘘を書くはずが無い”と言い、『武功夜話』は”日本の著作物の中でも屈指の名文”と言って、実証的な検証はなされていないようである。

そのような情況なので、すぐに読むことに苦痛を覚え、最後まで読み切ることはできなかった。

 

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