旅と病の三千年史

 旅行医学から見た世界地図

浜田 篤郎  著

文春新書  刊

平成14年11月20日(1版)
212ページ 690円

評 価
★★★

著者・浜田 篤郎氏は、11955年東京都生まれ。東京慈恵会医科大学卒業。医師・感染症研究家。労働者健康福祉機構・海外勤務健康管理センター所長代理。著書に『新型インフルエンザ「かかる前に」「かかってから」』『疫病は警告する』など。日本に旅行医学を紹介したトラベルクリニックの第一人者である。

本書は、「古代から人は、病と闘いながら旅をしてきた。古の旅人は異国の旅に死を覚悟したが、現代は持病があっても旅を楽しめる。旅と病の歴史を遡りつつ、病気を防ぐ旅支度を提案する。大航海時代の船乗りや兵士たちも、病と死の恐怖なしに、異国へと旅立つことはできなかった。歴史始まって以来の大旅行家、アレキサンダー大王が旅の途上で命を落としたのも、たった一匹の蚊によるマラリアのためであったと言われる。時は下って現代、旅の主役は一般市民となり、医学もまた目覚しく進歩した。しかし、無防備に旅立ち、現地で病院に駆け込む人ははいまも多い。逆に持病があっても適切な準備をすれば、旅を満喫できる。豊富な地図とともに、旅と病の歴史を遡り、病気を防ぐ「医学的旅支度」を考える。 」というもの。

旅は人生の楽しみである。古来から人類は旅に魅了されてきた。その一方で、常に病魔に冒され、未知のウィルスが猖獗を極めていた。
英雄アレキサンダーを殺したのは一匹の蚊によるマラリアだというし、帝国ローマを崩壊させたのも同じマラリアだったという。
戦国時代にヨーロッパに渡った天正遺欧使節団の少年たちも病魔に悩まされた。

この病との戦いは現在でも連綿と続いているのであり、大変興味深い事実である。本書は、概観ながら、そういった歴史を分かりやすく紹介されている。

著者曰く、
旅行医学もその時々の旅行の情況にあわせて進化を遂げてきた。旅の苦しみを緩和する古典的旅行医学の時代から、旅行の楽しみを後押しする現代の旅行医学まで、その対象はあくまでも旅行者であるが、目的には大きな変化が生じている。

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城と古戦場

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