実録 後藤又兵衛-史料批判-~城と古戦場~

『実録 後藤又兵衛』

 

綿谷 雪  著 

中央公論社  刊 

昭和56年2月15日 (1版)
235ページ 1,100円

評 価
★★★

著者・綿谷 雪(わたたに きよし)氏は、1903年(明治36年)1月17日和歌山市生まれ、1983年(昭和58年)5月18日没。日本の作家、時代考証家、日本武術(古武道)史研究家。神戸第二中学校から1930年早稲田大学政治経済学部卒。在学中から真山青果に師事し、創作、歴史考証を学ぶ。戸伏太兵(とぶし たへい)の筆名で、小説や戯曲も書き、『戯曲集 天ノ川辻』所収の「天ノ川辻」「十津川秋雨の譜」「遊撃四番隊」の3作が第11回直木賞候補(『Wikipedia』)

本書は、剣豪の研究などで有名な著者が記した、後藤基次の伝記。

後藤基次は、戦国時代の豪傑で、黒田孝高、豊臣秀頼の家臣。通称は又兵衞(またべえ)で、後藤又兵衛として有名。関ヶ原、朝鮮の役などを歴戦、大坂の陣では豊臣家に与して討死した。

『歴史と人物』の昭和54年12月号から55年4月号に連載されたもので、現在では文庫化されている。
おそらく後藤基次に関する確実な史料は乏しいのであろうが、本書は一応その出典を明記しており、ほとんどが江戸時代の軍記物に拠らざるを得ない現実が垣間見られる。

一方で、その史実を埋めるべくか、小説調の部分も少なくなく、”ノンフィクション歴史小説”といった様相を呈している。

その点は少々残念にも思われるが、後藤又兵衛に関する著作物が少ない中で、彼の歴史を追おうとした貴重な一冊であると言えることができよう。

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城と古戦場

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