『世界史とヨーロッパ』
ヘロドトスからウォーラーステインまで
岡崎 勝世 著 |
新人物往来社 刊 |
2003年10月20日(1版) |
評 価 |
著者・岡崎 勝世氏は、1943年 富山県富山市に生まれ。東京大学文学部西洋史学科卒業、東京大学大学院人文科学研究科修士課程修了、埼玉大学教養学部教授、同大学名誉教授。専門はドイツ近代思想史。東大大学院時代は成瀬治に師事。専門はドイツ啓蒙主義歴史学、特にゲッティンゲン学派の研究を詳細に行ない、その歴史学史的位置付けを行った(『Wikipedia』)。 本書は、「キリスト教の呪縛、オリエンタリズム、国民主義的歴史、世界システム論……。「歴史」はどう書き変えられたか!?「世界史」はどのように創られたのか。キリスト教的歴史観の成立と変遷、国民主義的歴史の誕生など、西欧的世界観・歴史観を根本から考える。」というもの。 ●第1章 ヨーロッパ古代の世界史記述――世界史記述の発生第1節 歴史観の世界観的基礎 1.古代ギリシア人の「世界」と時間 2.古代ローマ人の「世界」と時間 第2節 古代的歴史学・世界史像の特質 ●第2章 ヨーロッパ中世のキリスト教的世界史記述――「普遍史」の時代 第1節 歴史観の世界観的基礎 1.アウグスティヌスと古代的普遍史 2.中世における「世界」 3.中世における時間 第2節 中世的歴史学・世界史像の特質 ●第3章 ヨーロッパ近世の世界史的記述――普遍史の危機の時代 第1節 歴史観の世界観的基礎の変化 第2節 プロテスタント的普遍史の発生と年代学論争 ●第4章 啓蒙主義の時代――文化史的世界史の形成と普遍史の崩壊 第1節 歴史観の世界観的基礎――「科学革命」による諸変化 第2節 啓蒙主義的歴史学・世界史像の特質 1.啓蒙主義的世界史=文化史的世界史 2.普遍史の崩壊と啓蒙主義的歴史学 3.啓蒙主義的世界史の諸問題 ●第5章 近代ヨーロッパの世界史記述――科学的世界史 第1節 歴史観の世界観的基礎 1.ヨーロッパの世界支配と西欧の19世紀的歴史意識 2.ロマン主義の世紀 第2節 ヨーロッパ近代における歴史学・世界史像の特質 1.ランケによる「歴史主義の完成」と科学的世界史 2.マルクスの世界史像 3.19世紀に登場した世界史の新構成要素 4.19世紀西欧的世界史の諸問題 5.19世紀西欧的世界史と戦後日本における世界史 本書は、簡単に言えば、ヨーロッパを起源とする世界史の「世界史学」と言えるもので、古代から現代までの世界史の変遷・歴史を記している。それぞれの時代で、聖書に束縛された世界史、キリスト教を中心とした世界史、その他、その時々の思想・哲学によって、世界史という「事実」が、まったく異なって書き残されてきた歴史がよく理解できる一冊である。 現代では実証的な歴史学になっており、ウォーラーステインを中心とする「世界システム論」(国家単位で歴史の変動を語らない)によって世界史が綴られているようだが、本書を通読すると、今の世界史ですら永遠のものではないと感じられる。 私は世界史には全く詳しくないのでやや難解な部分もあったが、それでも歴史学というものの実像に迫る大変興味深い書籍である。 |