『川中島合戦 再考』

笹本 正治 監修

新人物往来社 刊

2000年12月15日(初版) 2,400円
310ページ

評 価
★★★

著者・笹本 正治氏は、1951年山梨県生まれ。名古屋大学大学院文学研究科博士課程前期修了。信州大学人文学部教授。博士(歴史学)。著書に『中世的世界から近世的世界へ』『戦国大名武田氏の研究』『戦国大名の日常生活』『村上義清と信濃村上氏』『軍師 山本勘助など。

本書は、
文豪島崎藤村が「破戒」の中で「信州第一の仏教の地」と呼んだ飯山も、戦国期には上杉謙信と武田信玄の合戦の舞台となった。飯山城、綱切り伝説、小菅の里などを通して川中島合戦を再検証する。本書は、2000年7月22日、23日の両日にわたり長野県飯山市において開催された歴史と文化を活かしたまちづくりシンポジウム「飯山から見た川中島合戦」の発表を基にして作成刊行した。各人の発表は、新たに原稿を書き下ろしていただき、パネルディスカッションは、当日の討論に加筆訂正して掲載した。
というもの。

・飯山からの川中島合戦再考
・武田側からみた川中島合戦
・上杉氏からみた川中島合戦と飯山
・信濃にとっての川中島合戦
・出土遺物から見る飯山の特質
・武田氏の本拠-武田氏館跡の発掘-
・武田氏の信濃侵攻と城郭
・越後戦国期城郭の中の春日山城
・戦国期における飯山城の歴史的意義
・パネルディスカッション川中島合戦再考

により構成されている。

川中島合戦そのものの検討というよりも、上杉氏と武田氏の攻防の中での、北信濃とくに飯山の位置づけ・影響などを紹介する書籍。

上杉方・信濃の側から川中島合戦を論じたものが少ない中で興味深い一冊であった。合戦自体は『甲陽軍鑑』の制限からほとんど記されていないが、合戦を取り巻く北信濃の状況については新たな知見が多かった。

また、飯山という地の重要性、素晴らしさを再認識できる好書である。とくに関心を呼んだのは、飯山市小菅という地が、かつては戸隠や善光寺にも匹敵する、信仰で栄えた聖地だったという点であった。なお、武田氏によって焼土と帰したという伝説があって、その後、衰退したらしい。ぜひとも飯山を訪れたくなる本であった。

 

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城と古戦場

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