『信玄、謙信と信濃

 

小林計一郎 著

信濃毎日新聞社出版局 刊

1991年1月10日(初版) 1,400円
217ページ

評 価
★★★

著者・小林計一郎氏は、大正八年(1919)長野県長野市に誕生した。長野県史編纂委員、長野郷土史研究会会長、信州短期大学教授などを歴任され、豊富な論文と的確な分析をもつ武田氏研究の大家であった。2009年没。『武田軍記』など多数。

本書は、川中島の戦いを中心とする武田信玄と上杉謙信の攻防を、それぞれの武将を中立に比較しつつ、歴史的分析を試みたもの。

個人的に、わたしは故小林計一郎氏の文献を大変信頼しており、また読みやすい名文で記されていると思っている。その点から集めた一冊。

内容的には、史料を前提にした実証的なもので、かなり広範にわたって分析されている。川中島一騎打ち、謙信の塩送りの真偽、両武将の信仰、などなど興味深いものばかりで、一気に通読できてしまう。

一般向けの書籍のため、分量は少なく、それほど突っ込んだ研究まで書かれてはいないが、買って損のない一冊だと思われる。

著者曰く、
私は、幸い、両将の馬蹄に蹂躙された信州の人間だから、だれにも遠慮する必要もない。自分の正しいと思うことを書き続けてきた。この本は信玄崇拝者、謙信崇拝者にはおもしろくないだろうが、史書としては公正な立場に立って書いてあるはずである。」

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城と古戦場

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