『山の民・川の民

 日本中世の生活と信仰

 

井上鋭夫 著

平凡社選書 刊
252ページ

1981年2月10日(初版)
1,600円

評 価
★★★

著者・井上鋭夫氏は、大正12年生まれ。東京大卒業。新潟大学助手、同学部教授を経て、昭和43年金沢大学教授となる。
その業績は高く評価されており、幅広い研究を行われた。特に一向一揆の分野では権威とされている。昭和49年、わずか50歳で没した。『一向一揆の研究』『上杉謙信』『謙信と信玄』『本願寺』『新潟県の歴史』など多数。

井上氏は、いわゆる天才肌の学者であり、一向一揆の分野だけではなく、中世史、郷土史など、数多くの研究が残り、現在でも多大な影響を与えている。
 

本書は、「かつて鉱山採掘は修験者の経営するところであった。彼らは水源地を掌握し、太陽の運行を熟知し、金山の光明を背景に「護摩の灰」の霊力をもって民衆に臨んだ山の神の代官であった―「文献史料がないところにも歴史は存在する」という信念のもと、著者は残存文書の解読に挑み、地を這うような現地調査を組織する。中世以前の日本で、山や川辺に住む多くの非農業民は、いかに生き、やがてどのような運命をたどったのか。伝承に秘められた歴史の真実とは。民俗学、地理学、考古学をとり入れ、社会経済史、宗教史を綜合し、後の新しい歴史学の展開を用意した記念碑的著作」というもの。

第一章「白山への道」
第二章「
妙高信仰から一向宗へ」
第三章「
中世鉱業と太子信仰
第四章「奥山庄の復元」
第五章「
近世農村への変動」

 

こころざし半ばで急逝された井上氏の業績を惜しみ、東大教授の石井進氏らが遺文を編集した一冊だという。内容はかなり専門的で、かつ新潟県の地理的な知識も必要とされる。
このため薄学な私には理解に及ばない事が多かったものの、瞥見しただけでも、その研究レベルの高さが窺われる書籍であることは間違いない。

  戻る

城と古戦場

inserted by FC2 system