『千利休』

-その生涯と芸術的業績-

 

桑田忠親 著

中公新書 刊

1981年4月25日初版 540円

評 価
★★★★

著者桑田忠親氏は、戦国史研究の大家で、高柳光寿氏と並び評される高名な歴史家であった。


明治35年生まれ。昭和62年没。大正15年國學院大學卒。東京大学史料編纂官補、立教大学講師を経て、國學院大學教授。文学博士、日本古文書学会評議員などを歴任。
『太閤秀吉の手紙』『明智光秀』『日本合戦全集』『淀君』『定本 千利休の書簡』など多数の著書があり、NHK時代劇ドラマの時代考証も担当。

本書は「利休の生涯を徹底究明し、その茶道文化を評価する。茶人としての利休は、はたしてどのような業績を遺したか。著者は、五十年余にわたる利休関係文献批判に基づいて、利休の人物の真相を究明し、その茶人としての、あるいは芸術家としての業績を歴史的に評価する。 」というもの。

(千利休画像・表千家の家元・不審庵所蔵の長谷川等伯筆)

著者は戦国史の重鎮であったが、特に茶道の分野については権威・泰斗であった。とりわけ千利休に関する研究では、名著『定本 千利休の書簡』をはじめ、現在でも大きな影響力を有している。

その桑田氏が逝去する6年前に、これまでの研究の集大成として世に出したのが本書である。その内容は、新書ながら、極めて充実したもので、千利休の事柄を博捜・網羅した一級の専門書というべきものである。史料に基づく実証的な書籍である。

千利休研究には必携の一冊ということができる。

著者曰く、
私は78歳の今日までに、千利休に関しては、著書も論文も、またかと思われるほどに書いたり、書かされたりしてきた。また、他人の書いたものにも残らず目を通し、自説、他説ともに公平な立場でこれを批判し、評価してきた。と同時に、利休に関する遺蹟・遺物・文献史料の蒐集、鑑定、活用に日夜専念してきた。本書は、その最終決定版としての、まったくの書き下ろしの著述である

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