『茶道の歴史』

桑田忠親 著

講談社学術文庫 刊

1987年12月10日初版 780円

評 価
★★★

著者桑田忠親氏は、戦国史研究の大家で、高柳光寿氏と並び評される高名な歴史家であった。


明治35年生まれ。昭和62年没。大正15年國學院大學卒。東京大学史料編纂官補、立教大学講師を経て、國學院大學教授。文学博士、日本古文書学会評議員などを歴任。
『太閤秀吉の手紙』『明智光秀』『日本合戦全集』『淀君』『千利休』『定本 千利休の書簡』『千利休研究』『日本茶道史』『茶の心』『山上宗二記の研究』『茶器と懐石』『古田織部の茶道』『細川幽斎』など多数の著書があり、NHK時代劇ドラマの時代考証も担当。

著者は戦国史の重鎮であったが、特に茶道の分野については権威・泰斗であった。とりわけ千利休に関する研究では、名著『定本 千利休の書簡』をはじめ、現在でも大きな影響力を有している。

本書は「日本独自の伝統芸道である茶の湯のしきたり、名物茶道具のいわれ、茶会の変遷、茶道の精神などについて、その概要を述べたものであります。しかし、むつかしい理論の証明や空虚な概念の叙述を避け、史上の人物、つまり、紹鴎・利休・遠州・足利義政・信長・秀吉らの逸話、人間などを中心に、茶道の礼法や茶道具の由緒について余り関心のない方々にも興味を持たれるように、工夫をこらしてお話しました。」(まえがき)というもの。

口語体の平素な文章で、読みやすく、茶道の歴史を学ぶことができる。さまざまな史料、茶器などを駆使して、茶道史を詳らかにする内容は、この道に生涯を費やした桑田氏ならではの、重厚な専門書と評価できる。一読の価値はあろう。

ところで、長い歴史の中で茶道には幾多の勃興と衰退が繰り返されたと言う。この現代でどれほど茶道が行われているのか、そちらがやや心配になるところであった。

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城と古戦場

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