『伊那の古城』

 

篠田 徳登 著

ほおずき書籍  刊

1971年3月10日初版
2010年9月23日改訂版(2,000円)
392ページ

評 価
★★★

著者・篠田徳登氏は、1904年12月21日、長野県上伊那郡宮田村で生まれる。1942年日大法文学部哲学科・史学科卒業。1930‐41年東京都内各小学校で教鞭をとる。1941‐60年長野県各高等学校にて社会科の教鞭をとる。1978年3月22日、逝去。

本書は、「伊那毎日新聞に連載されていた「古城物語」を昭和46年に単行本化した『伊那の古城』。今回40年ぶりに加筆・訂正を行い、改訂版を発刊というもの。

また、復刊当時の「伊那ウェブニュース」には、
上伊那地域の古い城についてまとめられた本「伊那の古城」が、改訂され、今月出版されました。新装改訂された「伊那の古城」。作者は、宮田村の文化財保護委員などを務めた、故・篠田 徳登さんです。1971年に初版発行、その後絶版に。上伊那に残る古い城について、伊那毎日新聞に1964年、昭和39年から300回近く掲載された記事をまとめたもので、紹介された城は70以上になります。1971年・昭和46年に初版が発行され、その後、絶版となっていました。手に入れたいとの声受け、改訂版を出版上伊那の古城が詳しく紹介された本として、手に入れたいという声を受けて、初版の発行に関った伊那市の春日愚良子さんが、出版社に持ちかけ、文字を大きくするなど改訂し、出版しました。春日さんは、「現場に足を運んで調べられた大変貴重な本。自分の地元の歴史を感じることもできる。上伊那の古城に関する本としては、これほどの本は、他にないのではないか」と話しています。」
という記事が残されている。

伊那地方に多数所在する城館を多数掲載している。そのほかにも関連する史跡も紹介されており、紀行文的な書きぶりとなっておる。内容は高水準、史料・古伝の蒐集も十分であり、重厚な歴史書籍と言える。著者が記した『伊那郡誌』歴史篇を加筆したものらしい。

また、以下のような俯瞰図も多く乗せられ、昭和のノスタルジックに浸ることのできる、情緒的な名著である。

著者曰く、
数百年の年をけみしても、掘った濠も掘りもそのまま残って落葉の下に埋まっている。当地の人の労力からみて莫大な工事であろうが、記録は元より、伝承も残っていない所がある。災をおそれて住人たちは、逃亡したり、地にもぐったものであろう。筆をはしらせたのも、その地に残ったものを拾えるだけ拾って、まさに消えなんとする古城の姿を、伝説を、残しておきたいからである。

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城と古戦場

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