ペルセポリスから飛鳥へ

清張 古代史をゆく
 

松本清張 著

日本放送出版協会  刊

昭和54年5月1日初版
236ページ 1,300円

評 価
★★★

著者松本清張氏は、1909年生まれ、1992年歿。日本を代表する小説家。1953年芥川賞。歴史小説・現代小説の短編を中心に執筆。『古代史疑』などで日本古代史に強い関心を示し、『火の路』などの小説作品にも結実した。緻密で深い研究に基づく自説の発表は小説家の水準を超えると評される。また、ノンフィクションをはじめ、近代史・現代史に取り組んだ諸作品を著し、森鴎外や菊池寛に関する評伝を残すなど、広い領域にまたがる創作活動を続けた(『Wikipedia』)。

本書は、
イランに遺された文物や遺跡をたどりつつ、古代ペルシアと日本の飛鳥時代の文化的関連を考察した作品であり、小説『火の路』(1975年刊行)の続編的内容の著作である。前半は紀行の形式で書かれ(取材は1978年9月に行われた)、後半は著者による推論が展開されている(『Wikipedia』)。

旅の章 I:古都レイ / ハリメジャンへの道 / エルブルズ山脈越えテヘラン周辺の遺跡をめぐり、また東京大学イラク・イラン調査隊の発掘結果をふまえつつ、推論を展開。

旅の章 II:シラーズ行き / ナクシュ・イ・ルスタム / イスファハンからイェズドへ / ゾロアスター教の聖地イェズドパサルガダエやナクシュ・イ・ルスタム、イスファハン、イェズドなどをめぐり、アケメネス諸王の墓や摩崖横穴墓、拝火壇等の遺跡に関する推論を展開。

考察の章:前章を受けての考察。推論の素材は、猿石・亀石・須弥山石・酒船石遺跡・益田岩船などの飛鳥の石造物、石の宝殿(生石神社)、法隆寺の天蓋、飛鳥寺の伽藍配置から、ペルセポリス宮殿や古代インドの柱頭飾り、サーサーン朝期の彫刻、ローマガラスの出土分布、古代オリエントのジッグラトなど、多岐にわたる。

松本氏が史的な旅を行い、それを叙述したもので、「飛鳥時代の日本にイラン人が来ていて、彼らの宗教を伝えて行った」という氏の推論を検証していく一冊。NHK特集のための3週間に及ぶ旅だったらしい(企画ディレクター水谷慶一氏)。

イランなどの中近東は、今では我々日本人とは乖離した存在であるが、古代には密接な関係があり、そして素晴らしい遺構が多く残されている事を知る。現代ではこのような旅は実現困難であろうが、松本氏の造詣の深さから、立派な歴史書となっている。

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城と古戦場

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