長宗我部元親

人物叢書

山本 大 著

吉川弘文館 刊

昭和35年(初版)
271ページ 2,205円(
新装版

評 価
★★★★

著者山本大(やまもと・たけし)氏は、大正元年(1912年)高知県生まれ。昭和12年東京帝国大学文学部国史学科卒業。栃木師範学校教授、高知大学教授を経て、同大学名誉教授。土佐史談会会長、高知地方史研究会会長、高知県・高知市文化財保護審査議会委員を歴任。平成13年(2001年)逝去。

本書は、「戦国争乱の中で南国土佐の一僻村から起り、四国制覇を成し遂げた元親は、中央への進出を望んだがならず、秀吉の麾下に属してからは近世封建体制確立への努力を傾けた。戦乱の中にも文化的教養を身につけたが、その伝記は軍記物に伝えられる以外あまり知られていない。『百箇条』『地検帳』など正確な史料に基づく元親の生涯。 」というもの。

四国中世史の権威による”土佐の出来人”こと長宗我部元親の伝記である。

長宗我部元親は、戦国乱世の中で、土佐国の一地方武家から、四国を統一した稀代の猛将軍・名将である。その一生は、後年の軍記物が伝える内容しか巷間に流布していないとされる。 
本書は、その限界に挑戦した、実証的歴史書である。

しかしながら、引用書を瞥見すると、やはり『長元物語』『南海通記』などの軍記物、特に、宝永五年(1708年)吉田孝世が著した『土佐物語』に拠るところが大きく、元親に関する根本史料の不足さを看取することができる。

そのような中で、出来る限りの史実を追求した真摯な一冊であって、『人物叢書』の誇るべき一作品ということができる。まぎれもなく長宗我部元親の基本書であろう。

昭和35年の書籍が、未だにその価値を軽減していない点は驚くべき事である。『人物叢書』にはそういった名著が散見される。

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