『黄金太閤』

-夢を演じた天下人-

 

山室 恭子 著

中央公論社 刊

1992年11月15日(初版)
188ページ 600円

評 価
★★★

山室恭子氏は、1956年東京都生まれ。東京工業大学教授。専門は日本近世史。1979年東大文学部卒業。東大院人文科学国史学研究科博士課程修了。1982年より東大史料編纂所助手。1993年東京工業大学助教授、1998年現職。

本書は、「黄金の茶室で開かれる茶会、聚楽第の庭で金銀を下賜される何100人もの武将たち、領地を練り歩く〈御巡幸〉の絢爛たる大行列。徹底して黄金太閤であることを演じ続けた天下人・豊臣秀吉の政策は、派手好みの祭好きと今日の目にはうつるが、実は衆庶の心に王者の姿を植え付けるための需到な演出に他ならなかった。版図の急速な大膨張を可能にした、この大言壮語と黄金に彩られた政策が、海を越え、破局へとなだれこんでいくまでを描く。」というもの。

一瞥すると、何だか物語風というか、語り口調的な書き振りなので、歴史書としてはどうかと感じたが、内容は信用の置けるものになっている。

秀吉がいかに世論を重視したのかが分かり易く書かれており、「唐入り」の悲劇に関する記述も興味深いものがある。
語彙は豊かだが、文脈が易しいので、あっという間に通読してしまうだろう。

今となっては、どこが新説だったのかは不明だが、他書では見たことの無い話しも多々あって、レベルの高い一冊だと言って良いだろう。

著者曰く、
「とにかく、ほんとにお祭り好きな王者であった。彼の年譜を辿っていくと、あれこれ趣向を凝らした催し物の多さにほとほと感心する。まさにイベント続きの生涯といった趣きである。」

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城と古戦場

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