『織田信長』

-中世最後の覇者-

 

脇田 修 著

中央公論社 刊

1987年6月25日(初版)
179ページ 600円

評 価
★★

脇田修氏は、1931年大坂生まれ。日本近世史専攻。1953年京都大文学部卒業。京都大院博士課程単位取得。龍谷大、大阪大の助教授、大阪大教授を経て大阪大学名誉教授。大阪歴史博物館館長。妻は、歴史学者・脇田晴子。

本書は、「徹底した合理性、非情なまでの現実主義、海外への興味と優れた国際感覚で、苛烈な戦国乱世を勝ち抜きながら、天下平定を目前にして悲劇的最期を遂げた信長の軌跡は、中世末期の現実に裏打ちされた意外に慎重なものであった。近世の開扉者にはなりえなかったものの、ときに狂いながら、秀吉以上の斬新さで、中世的な社会矛盾をぎりぎりまで煮つめて、領主支配の再編・強化に苦闘した武将の魅力と、その歴史的位置を検証する。」というもの。

信長の風土
天下布武
朝廷との関係
家臣団の統率
村と百姓の支配
織田政権下の都市と商業
信長の行動と思考
天下人信長とその挫折
から構成されているが、内容はかなり専門的というか、堅いものになっている。
織田信長の全般について、専門書を圧縮したような感じである。それが新書サイズになっているのだから、いちいち出典史料の明記はされていない。でも専門用語が多出するので、何だか納得せざるを得ない状況に陥る。
したがって、読んでいて、あまり面白くない一冊であった。

著者曰く、
「織田信長は、小説や演劇・映像の世界でも人気がある英雄であり、もちろん信長の研究も多くおこなわれているが、本書の描き出した信長は、いささか従来の信長像とは異なっていると思う。それは信長の魅力といえるものをあきらかにするとともに、彼を近世ではなく、中世最後の段階の人物として描いたことによるであろう。それによって戦国乱世のなかで苦闘する信長の「政治と行動」を書くことができたと思っている。」

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