『上杉謙信』

 

井上 鋭夫 著

新人物往来社 刊

昭和58年7月20日(初版)
原著 昭和41年
341ページ 1,800円

評 価
★★★

井上鋭夫氏は、大正12年生まれ。東京大卒業。新潟大学助手、同学部教授を経て、昭和43年金沢大学教授となる。
その業績は高く評価されており、幅広い研究を行われた。特に一向一揆の分野では権威とされている。昭和49年、わずか50歳で没した。『一向一揆の研究』『山の民・川の民』『謙信と信玄』『本願寺』『新潟県の歴史』など多数。
 

井上氏は、いわゆる天才肌の学者であり、一向一揆の分野だけではなく、中世史、郷土史など、数多くの研究が残り、現在でも多大な影響を与えている。

本書はその名のとおり上杉謙信の専門書。完全な伝記であり、史料に基づいた学術書になっている。内容的に網羅されており、通説として謙信の基本書となるであろう。信頼の置ける一冊である。

なお、著者は川中島合戦についてこう語る。
「その戦状は、ほとんどわからない。川中島合戦の話のすべては『甲陽軍鑑』から出ており、しだいに尾鰭がついて物語が完成したものである。『甲陽軍鑑』には、あんがい史実を伝えるものもあり、高坂昌信の記したものが基になっていると見なされる部分もあるが、戦争記事は軍学書であるだけに、作為・誤謬・誇張が多く、そのまま信用することはできない。」(260頁)

著者曰く、
「天下麻のごとく乱れた戦国の世に、生涯女性を近づけず、清僧のような生活を送った義理堅い武将、平素は大盃で酒を浴びるように痛飲し、ひとたび戦場に立てば、小豆長光の大刀を振りかざして敵の本陣に切り込んだ猛将、これがわが上杉謙信のイメージである。」

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城と古戦場

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