『武田信玄と勝頼』

 -文書にみる戦国大名の実像-

鴨川 達夫 著

岩波新書 刊

2007年3月20日(初版)
216ページ 740円

評 価
★★★

鴨川達夫氏は、1962年東京に生まれる。1988年東京大学大学院文学研究科修士課程修了。専攻は、戦国時代史。東京大学史料編纂所助教授。

本書は、「文書はかつて何があったかを示唆するナマの証拠である。これを主たる材料として、私たちは過去の出来事の再現に挑む。「風林火山」の軍旗で知られる戦国大名、武田信玄・勝頼父子の文書を読み解き、その人となり、滅亡に至る経緯を明らかにした一冊。文書の作られ方から丁寧に説き起こし、通説を根本から洗い直す。」というもの。

古文書の専門家である著者が、甲斐武田氏に関する文書を分析・再検討する内容になっている。
これまで当たり前に流されていた文書が、実は解釈や年次が誤っている事実を明らかにしたり、そこから垣間見える武田信玄・勝頼の人物像を描いている。「死後の花押」や、文書・偽文書の作成過程など、文書の裏事情が書かれていて興味深い。

ただ、タイトルの「武田信玄と勝頼-文書にみる戦国大名の実像-」というのは、ちょっとそぐわないかも知れない。そこまで概括的に武田家を述べているものではなく、古文書の検討が中心である。「戦国武田氏の古文書」あたりが正確と感じられる。とはいえ、面白い一冊であった。

著者曰く、
「信玄や勝頼に関する研究は、これまでに数えきれないほど発表されてきた。しかし、それらの中には、根拠の希薄な通説や思い込みに支配されたものもあれば、文書が含んでいる情報を引き出しきれていないものも見受けられる。通説や思い込み、つまり先入観を排除し、文書と真剣に向き合うことを心がければ、これまでとは違った信玄や勝頼の姿が見えてくるはずだ。」

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城と古戦場

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