『小山田氏と岩殿城』

 

鈴木 美良 著

山梨ふるさと文庫 刊

2000年8月25日(初版)
242ページ 1,500円

評 価
★★

著者・鈴木美良氏は、大正十五年(1926)生まれ。出生地、山梨県大月市七保町。工学院大学卒。大月市小中学校教諭、教頭、校長を歴任。大月市文化財審議委員、岩殿山総合学術調査委員、大月市郷土研究会長。山梨県歴史の道調査委員など。
著書に『名城岩殿山と小山田氏』『風林火山』『甲州街物語』など。

本書は、戦国時代に武田信玄の家臣であった小山田氏の山城である岩殿山城と小山田氏の歴史を紹介するもの。地元の歴史家の著者が記した郷土史書である。

『妙法寺記』などの史料とともに、地元の伝承などを交え、総合的に記述されている。ただ、出典の明記が十分でなく、どこまでが史実かは疑問も残るが、読み物としては興味深い面もある。
(地元の方言、風習なども書かれている)

もっとも、通説である”小山田氏の居城は岩殿山城”というのは、いかんせん不明確な話しであり、少なくとも小山田氏の本拠ではなかったと思われる。いずれにせよ、その辺りの史料は充分に残っていない。

城郭本ではなく、あくまでも郷土史として購入するべきであろう。

著者曰く、
「名城のためか、小山田氏の威容を恐れたのか一回の戦闘の歴史も残さず城主は滅亡し、領民は安泰で二千人余の家臣団や戦闘員は、厳しい織田軍の詮索にもかかわらず一人の戦犯者も出さず敗戦の嵐を乗り切った。これも到って珍しいことで、領民が一丸となって秘密保持に徹し不言のプライドを守ったためであろう。」

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城と古戦場

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