『武田信玄の戦略』
-三方原の戦-
高柳 光寿 著 |
春秋社 刊 |
1988年3月20日(復刊・原刊1958年) |
評 価 |
著者は、戦国史研究の権威であった。 その研究は、極めて実証的で、予断を持たず、数多くの史料を冷静に分析される。博士の打ち出された新説の多くは、当時は画期的なものだったろうが、現在は通説になっている。 高柳氏の『戦国戦記』シリーズの一冊である。他に本能寺の変、長篠の戦、賤ヶ岳の戦いなどが出版されている。(いずれも必読の名著である。) 本書は、「信玄対家康の歴史を変えた一大決戦。正確無比の史料解読と抜群の推理力を駆使して、信玄対家康の戦略・戦術を克明に比較分析し、信玄のイメージを決定づけた名著 」というもの。 確実な史料の乏しい三方ヶ原の合戦について、できる限りの史料を駆使し、可能な推察を加え、その史実を露わにしている。まさに高柳歴史学であり、その内容の信頼性は高い。なお、高柳氏は信玄の侵攻に目的について、上洛説ではなく局地説を主張されている。 小和田哲男氏も『三方ヶ原の戦い』を著すにあたり、本書を大きな目標にしたと明言されている。 いずれにしても名著であることに間違いはない。 著者曰く、 |