『石田三成』

  人物叢書

今井 林太郎 著

吉川弘文館 刊

〔新装版〕 (1988/12)
239ページ 1,700円

評 価
★★★

著者は、明治43年大坂生まれ。東京大学卒、法政大講師、神戸大教授、大手前女子大教授などを歴任。兵庫県西宮市居住。専門は日本古代・中世史。平成15年老衰のため死去。
著書に『日本荘園制論』『天下統一』『織田信長』『兵庫県史』など。

本書は、関ヶ原の戦に一敗地に塗れ、ついに再起し得なかった三成の末路は悲愴である。秀吉の奉行として縦横の才腕を振っただけに、敵も多く、秀吉の死後はむしろ逆境に追いやられた。豊家の恩顧と、家康打倒との交錯したその心境はどうであったか。本書は四十年の波瀾に富んだ生涯を、正確な史料を通してダイナミックに描く出した。 」というもの。

初版は昭和36年8月で、かなり古い書物である。しかし、「人物叢書」であるだけに、その道の
一流の学者が、史料に基づいてしっかりと記述した伝記本である。

残念なのは、史料・出典の明記があまり為されていない点である。通読すると、俗書の記事をそのまま採用している箇所もあり、玉石混交の感が少しある。

それはともかく、ちゃんとした歴史本であり、石田三成の生涯を知るには適当な一冊であろう。

著者曰く、
「関ヶ原の戦いで西軍が敗北し、その後徳川氏がながく政権をとることになったため、比較的三成と親しい関係にあった大名たちも、徳川氏を憚って嫌疑を受けるような三成の史料を湮滅してしまったことである。従って今日まで残存している三成関係の史料の多くは、三成の反対の側の諸家に伝わる文書や覚書・聞書の類であって、主としてそれらによって三成の人物像が描かれていることである。」

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城と古戦場

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