『歴史とはなにか』

  

岡田英弘 著

文春新書 刊

2001年02月20日(初刊)
224ページ 725円

評 価
★★★

著者は、1931年生まれ。東京大学文学部東洋史学科卒業。1957年日本学士院賞受賞。現在、東京外国語大学名誉教授、東洋文庫研究員。その研究は、満洲史、モンゴル史、中国史、日本古代史、韓国史と広汎にわたり、西洋史をふくむ世界史におよぶ。著書に『倭国』(中公新書)、『この厄介な国、中国』(ワック文庫)、『やはり奇妙な中国の常識』(ワック文庫)、『現代中国と日本』(新書館)、『中国文明の歴史』(講談社現代新書)、『だれが中国をつくったか』(PHP新書)、『世界史の誕生』(ちくま文庫)(文春新書)など多数。

本書は、「歴史は科学ではなく物語である。インド文明は「歴史のない文明」だ。「中世」なんて時代区分は不要。資本主義経済はモンゴル帝国が世界に広めた。フランス語は人工的に創り出された言葉。十九世紀末まで「中国人」はいなかった。文献通りなら邪馬台国はグアム島あたり。神武から応神までの天皇は実在しない。『古事記』は最古の歴史書ではない……など、一見突飛なようでいて実は本質をついた歴史の捉え方。歴史学者としての年来の主張を集大成した、まことにエキサイティングな論考」というもの。

内容は、モンゴル史など世界史研究の一線級である著者の様々な主張が見られる。なるほどその説には納得させられるが、ややもすればかなり排他的なのが気になる。例えば「歴史の区分は”現代”か”古代”かしかない」という主張も、断定的に述べているが、若干の疑問もないわけではない。

当サイト管理人には、世界史や現代史の知識がなく、本書の話しがどこまで正しいのかは分からない。一読すると納得するが、その真偽は、反対の説も読んでみないと判断できない。

それはともかく、読み物としては大変面白く、通読の価値はあろう。

著者曰く
「歴史家にとって大切なのは、いったいなにがほんとうに起こったのかを明らかにするために、史料の矛盾をつきつめていって、もっともありそうな、説得力のある解釈をつくりだすことだ。その際、道徳的価値基準は有害、無益、無意味なものであり、歴史からはいっさい排除しなければならない。これは歴史がちゃんとした歴史になるために、絶対の条件だ。」(152頁)

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城と古戦場

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