『青史端紅』

  

高柳光壽(高柳光寿) 著

朝日新聞社 刊

昭和37年12月10日
270ページ 480円

評 価
★★★

著者は、戦国史研究の権威であった。
明治25年生まれ。東大史料編纂官、國學院大教授、大正大教授、日本歴史学会会長などを歴任。昭和44年没。『足利尊氏』『鎌倉市史』『明智光秀』など。

その研究は、極めて実証的で、予断を持たず、数多くの史料を冷静に分析される。博士の打ち出された新説の多くは、当時は画期的なものだったろうが、現在は通説になっている。

高柳氏の主著『戦国戦記』シリーズ本能寺の変長篠の戦賤ヶ岳の戦いなどが出版されている。(いずれも必読の名著である。)

本書は、『週刊朝日』に連載された歴史物語。著者が東京大学を退官した後、史跡めぐりをした成果を織り交ぜて記述されたもの。一般向けであるため、大変読みやすい文書であり、それでも深い知識が窺える一冊である。豊臣秀吉、高台院夫人、豊臣秀次、明智光秀、竹中半兵衛、山中鹿介、武田勝頼、織田信孝、千姫、伊達政宗、蒲生氏郷、徳川家康、佐久間鬼玄蕃などが取り上げられている。

これほど幅広いものであるが、いずれも相当な研究をされたらしい。そのあたりの歴史書を残さずに逝去されたのが残念でならない。

著者曰く、
「私は三十数年もの間、東大史料編纂所にいた。その間、諸方へ史料の採訪に出張したが、古文書や古記録を捜し歩くのが主で、史蹟の踏査はあまりしなかった。名古屋へ行っても桶狭間へ行かなかったし、島原へ行っても、森ヶ岳へは行かないという有様である。しかし史料の編集はそれでよいが、歴史を書くとなるとそうはいかない。それで退職してからは史蹟を歩きまわることにしていた。」

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城と古戦場

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