『青史端紅』
高柳光壽(高柳光寿) 著 |
朝日新聞社 刊 |
昭和37年12月10日 |
評 価 |
著者は、戦国史研究の権威であった。 その研究は、極めて実証的で、予断を持たず、数多くの史料を冷静に分析される。博士の打ち出された新説の多くは、当時は画期的なものだったろうが、現在は通説になっている。 高柳氏の主著『戦国戦記』シリーズ本能寺の変、長篠の戦、賤ヶ岳の戦いなどが出版されている。(いずれも必読の名著である。) 本書は、『週刊朝日』に連載された歴史物語。著者が東京大学を退官した後、史跡めぐりをした成果を織り交ぜて記述されたもの。一般向けであるため、大変読みやすい文書であり、それでも深い知識が窺える一冊である。豊臣秀吉、高台院夫人、豊臣秀次、明智光秀、竹中半兵衛、山中鹿介、武田勝頼、織田信孝、千姫、伊達政宗、蒲生氏郷、徳川家康、佐久間鬼玄蕃などが取り上げられている。 これほど幅広いものであるが、いずれも相当な研究をされたらしい。そのあたりの歴史書を残さずに逝去されたのが残念でならない。 著者曰く、 |