『徳川家康伝』

-その軍略と治政-

神谷 昌志 (著)

明文出版社 刊

平成7年6月22日
294ページ 2,700円

評 価
★★

著者は、昭和4年静岡県浜松市生まれ。浜松の郷土史家。静岡県生涯大学葵学園講師、教育委員会静岡県史編纂調査協力委員、公安委員会講師などを歴任。浜松市教育文化奨励賞受賞、地方出版文化功労賞受賞。著書に『浜松市誌』『遠州産業文化史』『遠州の史話と伝承』『遠州歴史散歩』『静岡県の史跡散歩』『遠州の古寺』など多数。

本書は、「これまでの家康伝では扱われていない職人集団や出版事業など幅広い人間家康像を求めて、家康の行動した足跡を実地踏査でまとめあげた活きた人物史である。 」というもの。

日本史上、もっとも成功を収めた武将・徳川家康の伝記である。徳川家康について知ろうとすると、意外にも、彼を単独で扱った専門書が実に少ないことに驚かされる。その点、本書は貴重な存在である。

しかし、その人生はあまりにも長く、波乱に富んでいるため、すべてを記すとなると、相当なボリュームが必要なのであろう。本書は、史料の明記が充分ではない事、かなり簡略された記述になっている事などが残念に思われる。家康に関する史料は膨大で、すべてを網羅して一冊に纏め上げるという作業は至難の業なのかも知れない。

著者曰く、
「本書は家康の生涯を史実にまとめた史書であるからフィクションは全く許されない。そのうえ、で特色を出すため、これまで家康伝では扱われていない分野を努めて取り入れるようにした。そこには軍団を背後で支えていた鍛冶師や鋳物師などの職人集団に対する保護育成を通じての巧みな軍略があり、『大蔵一覧』や『群諸治要』などの出版事業を初めとする文化振興政があった。」

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城と古戦場

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