『真田信繁

「日本一の兵」幸村の意地と叛骨

 

三池純正 著

宮帯出版社 刊
293ージ

2009年11月25日(初版)
1,300円

評 価
★★

著者・三池純正氏は、1951年福岡県生まれ。工学院大学卒。東京都下の市役所に勤務しながら、武田氏を中心とした歴史を研究される在野の歴史家。日本作家クラブ会員、歴史研究家。『真説・智謀の一族 真田三代『真説・川中島合戦』など。

本書は、戦国武将として最も人気の高い真田幸村の通史を記したもの。

戦国武将の中でも、「日本一(ひのもといち)の兵(つわもの)」と称される真田信繁(幸村)は、天下の趨勢が徳川に帰そうとも、最後の最後まで豊臣に忠義を尽くした忠心。本書では、多くの人に慕われ、武人としての生き方を貫いた真田信繁の人となりと生涯に迫る渾身の一冊。真田家の起源や信繁の父昌幸についても詳細に解説。また、信繁や昌幸の内面を丁寧に掘り下げ、真田家を貫く意地と叛骨精神についても詳細に検証。本書の最大の見どころは、少ない兵力で大坂夏の陣で家康を追い詰めた、信繁の最期の奮戦である。読み手の心を打つ迫真の描写で、信繁の獅子奮迅の猛攻を余すところなく活写する。真田信繁の生涯、思い、そして最期とは。数百年にわたって日本人の心を動かし続けた武将の真実に迫る。

真田信繁(幸村)に関する本格的な学術書は現在なかなか見られない。それは、彼が、真田家を継ぐことはなく、45歳まで父・昌幸に付き添っていた。したがって、大坂城に入るまでの彼に関する史料は豊富とはいえず、不明な点が多いことに起因するのであろう。

本書はそのような幸村の伝記と位置づけできうるものであろう。内容的にも、一応、史料に基づいた記述になっている感じには見える。

しかし、真説・智謀の一族 真田三代』と同様に、細かく検討するまでもなく、深い研究の成果が盛り込まれた書籍とは言うことができない。近年の様々な専門書を取りまとめて一冊にしたような感覚を受ける。さらには、”英傑幸村”という偶像に固執しており、史料精査に中立性がなく、史料の採否についても実証性は感じられない。あと何気に史料に基づかない想像も多く挿入されているが、それらも史料に依拠しているような錯覚を持たせる文脈になっている…。

幸村の通史を垣間見るには適した一冊だが、専門書としての期待に答えうるかは疑問である。

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城と古戦場

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